社内での生成AI導入のポイント【成功の秘訣と注意点】

生成AIが登場して数年、日本国内でも企業による生成AI導入のニュースを見かけることが増えてきました。

しかし、生成AIに興味はあるものの「業務への活用方法がわからない」「そもそも生成AIの使い方がわからない」という企業も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、生成AIを効率よく業務に導入する方法を紹介します。生成AIの社内導入に苦戦している方はぜひ参考にしてみてください。

日本企業の生成AI導入はまだまだ様子見だが肯定的

最初にも述べた通り、これほど「生成AI」という言葉を耳にするようになったのにもかかわらず、日本企業の生成AI導入率はまだまだ低いのが現状です。

総務省が令和6年に公開した「情報通信白書」にある「生成AIの活用方針策定状況」によると、生成AIを「積極的に活用する方針である」と回答した企業はわずか15.7%にとどまっています。これは、他国と比較しても非常に低い数字です。

それに対して「方針を明確に定めていない(41.4%)」や「わからない(11.7%)」といった「様子見状態」の回答が半数以上を占めています。

日本企業における生成AIの活用方針策定状況。「積極的に活用する方針である」が15.7%と他国に比べて低い。

出典:令和6年版 情報通信白書 図表Ⅰ-5-1-4

しかし、「生成AIの利用意向」を見てみると「ぜひ利用してみたい」や「条件によっては利用を検討する」といった比較的肯定的な回答が多いことがわかります。

出典:令和6年版 情報通信白書 図表Ⅰ-5-1-3

生成AIの社内導入による効果

生成AIは今までの業務ツールと異なり、様々な面で大きな効果を得られます。

以下は、そのうちの一部をリストアップしたものです。

  • 業務効率を改善できる
  • 今まで専門知識が必要だった業務が可能になる
  • 少ない人材で業務を遂行できる

短期的なものから長期的なものまで様々ですが、それぞれ順に解説します。

業務効率を改善できる

生成AIを活用すれば、今まで時間がかかっていた業務を効率化や自動化ができます。

例えば、以下のような業務です。

  • メールなどにおける文章の下書き作成
  • 議事録の要約や日報の作成
  • インターネット上からの競合製品や市場調査

こういった業務はどうしても人間の手が必要で時間がかかるものですが、生成AIを活用することで効率よく進められます。

別途専用のツールを導入する必要がある場合もありますが、今までは人力でなければできなかった業務の自動化も可能です。

以下は、ChatGPTを用いて業務で使える生成AIツールについて調査してもらった例です。もしこれだけの調査を自力でしようと思うと、それなりに時間がかかるのではないでしょうか。しかし、ChatGPTを使うと1分もかからずに、これだけの調査結果を得られました。

今まで専門知識が必要だった業務が可能になる

生成AIは汎用的なタスクをこなせるため、従来であれば専門知識が必要だった業務もこなせるようになります。

例えば、以下のようなことが専門知識がなくても可能になります。

  • 毎週使う議事録を自動生成するプログラムを作成
  • 説明などに必要なイメージイラストの作成
  • プログラミングが必要な業務の自動化

これにより、従来であれば外注などが必要であったり、特定の社員に依存してしまっていた業務を全社員が行えるようになり、コストや時間の削減が可能です。

日常の業務で繰り返し行っているようなものの多くは、システム化(プログラム化)することで自動化が可能です。しかし、これには当然プログラミングなどの専門知識を必要とします。しかし、生成AIを活用すれば簡単なプログラミングであれば誰でも可能になります。

実際、弊社でもプログラマーではない社員がChatGPTを用いてたった一人でプログラミングを行い、業務の効率化に成功しています。

少ない人材で業務を遂行できる

生成AIをうまく活用すれば、今まで何人もの社員を要していた業務も数人で行えるようになります。

特に、少子高齢化が進んでいる現状において、今後は今まで以上に採用活動が難しくなることが予測されます。こうした中で、少ない社員で効率的に業務を遂行できるということは、大きな効果を発揮します。

以下は、実際にChatGPTを使ったブレーンストーミングの例です。ChatGPTを使えば、これだけの案をたった一人で、たった十数秒で得られます。

このように、従来は一人や少人数では難しかった業務であっても、ChatGPTを活用することでこなせるようになります。

生成AIの社内導入を成功させるコツ

せっかくコストをかけて生成AIを導入したにもかかわらず、うまく活用できなければ意味がありません。

生成AIを社内導入して失敗する企業には、以下のような共通点があります。

  • 生成AIを正しく活用できていない
  • いきなり会社全体に導入しようとする

このような失敗に陥らないために、生成AIを導入する際には以下のステップに従ってみてください。

1. 生成AIの得意なタスク・苦手なタスクを理解する

生成AIは非常に優秀なのでどのような業務でもこなせるように思えますが、人と同じで得意・不得意があります。

  • 相性の良いタスク
    • 文章のアイデア出し・草案作成
      • ブログ記事の下書き作成
      • プレスリリースの下書き作成
    • リライトや要約
      • 議事録の要約
      • ドキュメントの要約
    • クリエイティブコンテンツのアイデア生成
      • 小説のストーリー案、キャラクター設定案の草案作成。
      • マーケティングキャンペーンに使う動画シナリオの大まかな概要を作成。
  • 相性の悪いタスク
    • 正確性が非常に重要な業務
      • 医療診断や投薬処方など、厳密な知識や責任が要求される領域。
      • 金融取引や財務諸表の算定など、計算ミスが許されない業務。
    • 最新データやリアルタイム情報を必要とするタスク
      • リアルタイムの株価や天気予報をもとにした意思決定支援。
      • 現在進行中のトレンド調査やニュース速報の正確な把握。
    • 複雑なコンプライアンス・リーガルチェックが絡む業務
      • 法律文書の最終的な有効性を判断したり、契約書のリーガルチェックを行う。
      • 規制対象業務に関する厳密な報告書作成(金融商品取引法、個人情報保護法など)。

まずは、この例を元に自身の業務の中で生成AIと相性の良さそうな業務を探してみてください。

2. まずは一部の部署・社員から導入してみる

生成AIを社内導入するからといって、必ずしも最初から会社全体に導入する必要はありません。

いきなり会社全体に生成AIを導入しようとしても、大きなコストがかかったり、活用できない場合が多いです。

まずは、生成AIと相性の良い部署や、希望者を募る形で部分的に導入してみましょう。こうすることで、生成AI導入の初期コストを抑えつつ、効果的に生成AIの活用が可能です。

生成AI導入時の注意点と解決策

最後に、生成AIの導入効果がわかっても、業務で活用する上でどうしても気になってしまうのが「リスク」です。

よく問題にされる点としては、以下のようなものがあります。

  • 情報漏えい
  • 情報の正確性

このような「リスク」は、生成AIを社内導入する上で避けて通れないものです。

しかし、生成AIを正しく理解し、適切に活用することで、多くのリスクの回避が可能です。

生成AIツールの設定を見直して情報漏えいを防ぐ

多くの生成AIサービスでは、ユーザーの入力した情報を生成AIの学習データとして利用している場合が多いです。そのため、社員が意図せず入力した社内情報が生成AIに学習されてしまうおそれがあります。

しかしながら、最近は企業向けプランを提供しているサービスも増えてきました。このようなサービスを利用することで、意図しない情報漏えいを回避できます。

たとえば、ChatGPTは「Teamプラン」という企業向けプランを提供しています。このプランを契約している場合は、ユーザーの入力された情報は生成AIの学習データとして利用されなくなります。

引用:https://openai.com/ja-JP/chatgpt/pricing/

情報の正確性をしっかり確認する

生成AIの出力は必ずしも正確とは限りません。特に専門的な情報や最新のデータは誤っている可能性があるため、必ず信頼できる情報源と照らし合わせましょう。確な回答を返してくれるとは限りません。

また、ChatGPTなどではリアルタイムにWeb上の情報を検索してくれるような機能があります。このような機能を利用することでも、生成AIの回答の正確性は向上します。

まとめ

生成AIはあらゆる分野において大きな変化をもたらし、それは業務においても同様です。日本の多くの企業も生成AIに注目しつつも、導入までたどり着けている企業はまだ多くありません。

まずは生成AIと相性のよい業務を見極め、段階的に導入を進めていきましょう。生成AI導入によるリスクも適切に活用することで回避が可能です。

もし生成AIの業務活用で悩んでいるのであれば、この記事が参考になると幸いです。